公益財団法人山田進太郎D&I財団は、2023年12月に発表されたPISA2022*1(国際学習到達度調査、以下、PISA)における男女のスコア差に焦点を当てた独自の分析を実施し、その結果をまとめた報告書を本日公開しました。PISAは、OECD(経済協力開発機構)が実施する15歳の生徒を対象にした世界的な調査です。今回の分析では日本の順位と男女のスコアの概要のほか、数学分野における男女のスコア差が日本より大きいが、STEM分野(工学部)に占める女子の大学入学比率が日本より大きい19か国のうち、オーストラリアとカナダに注目し、その要因を分析しました。ダウンロードURL:https://drive.google.com/file/d/1PhkHemgK_oVET6iJvEsOmqqwyvAHGG9C/view?usp=sharing■レポートのおもなポイント1.日本の成績の概要・182校、5,760人の生徒がPISA2022に参加。・数学・科学・読解のすべての分野で、日本は前回調査に比べて平均得点が向上。・特に、数学と科学においては2012年のPISAへの参加以来の過去最高スコアを記録。・新型コロナウイルス感染症の休校期間が短かったことが成績向上に寄与した可能性。2.日本における男女のスコア差の分析・男女のスコア差は縮小傾向にある。・女性が読解力で優位性を示し、一方で男性が科学・数学においてスコアが高く、国際的なトレンドと整合する。・PISA2015において、男女の学業成績差は生まれつきの能力差ではなく、教育制度の改善で縮小可能と示唆*2あり。3.国際比較と洞察 日本は、PISA2022数学の男女スコア差が9ポイントだが、工学部の女性入学比率*3の変化を見ると、2015年の14%から2021年時点では16%となっており、2%アップしたものの、OECD諸国の中で最低ランクとなっている。3-1.オーストラリアの取り組み:・PISA2022数学の男女スコア差(11ポイント)、工学部の女性入学比率の変化(2015年:22%→2021年:28%、6%アップ)・2015年に教育大臣によって掲げられた10か年戦略「National STEM School Education Strategy 2016–2026*4」により、STEM教育の全体の向上を図っている。・2019年にはSTEM分野における女性の推進に関するアクションプラン「2020 Action Plan*5」が掲げられ、女性がSTEM分野で成長し、活躍する機会を提供することは、政府、産業界、教育界、地域社会の責任であるとした。・具体的には、Girls in STEM ツールキット(The GiST*6)など、女子学生を対象として、学業と職業のつながりを理解させる機会を強化。・産業界と教育機関の連携としては、社会的企業であるShe Mapsがニューサウスウェールズ州林業公社等の森林産業の業界団体や企業が推進する林業教育に関するリソースを提供しているプロジェクトと組み、STEM教育に特化したドローン関連の学習リソースを開発。女子学生が59%参加するプログラムを展開。3-2.カナダの取り組み:・PISA2022数学の男女スコア差(12ポイント)、工学部の女性入学比率の変化(2017年:26%→2020年:27%、1%アップ)・カナダのSTEMに関連した政策は、連邦制国家で各州が自治権を持っているため、政府はCanCodeプログラム*7という助成金プログラムで民間の非営利団体を支援したり、地域の大学に助成金を提供するなどで連携し、産業界を含むステークホルダーも含めながら対象者や教員、保護者に幅広くアプローチしている。・CanCodeプログラムは、女子生徒を含む過小評価されているグループへの支援を主軸に、コーディング等に関するスキルアップの機会を提供。予算は3年間で計8,000万CAD。・カナダの5つの地域で女性の大学教授を委員長として任命するプログラムChairs for Women in Science and Engineering Program*8で、地域および全土で女性のSTEM分野での活躍を支援するためのイニシアチブを広く展開。5年間で5つの地域で合計4万人弱の生徒や保護者、9,000名を超える企業人などを含む7万人弱、47の企業等にリーチ。4.各国の取り組みから得られた示唆4-1.オーストラリアとカナダの取り組みを通じた示唆:・STEM分野での女性比率向上には政府の指針やアクションプラン、産官学連携が必要。・オーストラリアは2030年までのビジョンを掲げ、政策を軸にした産官学連携が寄与。・カナダはCanCodeプログラムなど、主要な指針と大規模な予算のもと、非営利団体や各州の大学等の中枢機関による連携・協力が寄与。4-2.日本の課題と可能性:・日本は一部の政府機関や教育機関が女性のSTEM推進に取り組むものの、国全体としての統一方針が欠如。・ジェンダーに関するステレオタイプが社会に根強く残っているが、PISA結果からは15歳の理系学力は男女とも高く、男女スコア差は縮小傾向。・オーストラリアのように産官学連携の中で比較的自由度が高い産業界が、教育プログラムやツールの提供など、本テーマの課題解決に向けて寄与できる可能性がある。政府予算を確保できれば、カナダのように大学や非営利団体との連携による活動の加速もありうる。 今回、PISA調査における男女のスコア差に注目し、国内および海外諸国との比較結果をもとに洞察をまとめました。 当財団は今後、政府および産業界に対して、本課題に取り組めるように働きかけ、性別等の背景にかかわらず誰もが「好きなことを目指せる社会」の実現に向けて、ダイバーシティ&インクルージョンの側面からその推進を行い、積極的に社会に貢献していきます。*1:https://www.oecd.org/publication/pisa-2022-results/country-notes/japan-f7d7daad/*2:https://www.oecd.org/pisa/pisaproducts/pisainfocus/PIF-49%20(jpn).pdf*3:https://stats.oecd.org/Index.aspx?datasetcode=EAGGRADENTR_FIELD*4:https://www.education.gov.au/australian-curriculum/support-science-technology-engineering-and-mathematics-stem/national-stem-school-education-strategy-2016-2026*5:https://www.industry.gov.au/publications/advancing-women-stem-strategy/2020-action-plan*6:https://www.thegist.edu.au/*7:https://ised-isde.canada.ca/site/cancode/en*8:https://www.nserc-crsng.gc.ca/Professors-Professeurs/CFS-PCP/CWSE-CFSG_eng.asp