はじめに~医学部生でも受給できる奨学金ってあるの?~近年、学生にとって「奨学金」がますます身近な存在となっています。受給者の増加はもちろん、奨学金の種類の多様化にも注目が集まっています。日本学生支援機構が提供する奨学金のほか、自治体から民間企業が支援するものまで、年々多様化している印象を受けます。数ある奨学金の中でも、特に返済を行わなくてよい「給付型」の奨学金が増えてきました。私がアンバサダーを務めている公益財団法人山田進太郎D&I財団が募集しているSTEM(理系)女子奨学助成金にも、返済の義務はありません。STEM(理系)分野を志す女子高校生であれば、所得などの制限もなく、応募することができます。医学部生としてアンバサダー活動を行っていく中で驚いたのが、奨学金に応募してくださる女子高校生の「医療系」志望者の割合の高さです。一方で「医療系」を志望する際に気になるのはやはり学費ではないでしょうか。日本の医学部はよく「学費が高い」と言われがちですが、他の国と比較してみると、そうでもありません。例えば、アメリカの大学からメディカルスクールへの進学を考えるとなると、州立など公立のスクールを選んだとしても、学費のみでおよそ4,000万円近くかかってしまいます。生活費も含めると、より多くの負担があることでしょう。日本の国公立医学部の場合、6年間でおよそ300万円の学費がかかります。海外に比べると良心的かもしれません。しかし、私立大学の場合、高い大学では6年間でおよそ4,500万円、最も安い医学部でもおよそ1,800万円もの学費がかかります(フィナンシャルフィールド調べ)。これらに加え、下宿代や通学代、実習費など、追加でかかる費用を考えると、日本国内の医学部生にとっても、気軽に受給できる奨学金は有意義であると言えるでしょう。そこで今回、私は「医学部生を支援する奨学金」について調査を行ってみました。探してみると、実にさまざまな奨学金が見つかりました。現在進行形で奨学金の恩恵を受けている身として、後輩の皆さんにとって少しでも役立てばと思い、医学部生を対象とした奨学金をいくつか、紹介します。よく聞く「地域枠」って何?医学部志望の皆さんは、一度は「地域枠」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。これは、「地域医療の担い手を確保するために、大学医学部が設ける入学者選抜枠。将来、その地域で一定期間、医療に従事することを条件に、返済不要の奨学金を支給したり、入学しやすくしたりする」(出典:コトバンク)制度です。「一定期間、当該地域で働かなければならない」「ある地域の病院に就職しなければならない」など、該当条件が詳しく定められていることが多く、入学枠も別で定められています。そのかわりに、月10万~20万程度の奨学金を得ることができたり、共通テストの結果や小論文、面接のみの受験で、早期に選考を終えられるなどのメリットがあります。地域枠の種類によっては、将来の診療科についても定められているものもあります。取り決めを守れなかった場合のペナルティはさまざまですが、近年では「初期臨床研修における就職活動システム(マッチング制度)への参加制限」など、厳しい対応も見られます。文部科学省は、地域の医師を確保するために定員を増やしていくことを令和6年度も継続していくと指針を出しており、「都道府県が都道府県計画その他の都道府県が作成する医療に関する計画に基づき奨学金を設け、大学が地域医療を担う意思を持つ者を選抜し、地域医療等の教育を実施」すると定めています。令和5年度は961人もの学生が地域枠として入学しました(前年比+53)。その中でも、診療科偏在対策として、診療科選定地域枠を331人(令和5年度は45人追加)と定めました。地域枠自体は、平成27年度時点で全国の67大学(自治医大を除く)で導入されており、そのうち63校(94%)が返還を免除される奨学金制度を設けています。県内の医療に従事するという意思を持つ人であれば、地域枠はお財布に優しい制度といえるでしょう。番外編:矯正医官奨学金皆さんは「矯正医官」のことをご存知でしょうか?矯正医官はよく「塀の中のお医者さん」と例えられます。その名の通り、刑務所や拘置所、少年院などで受刑者に対する医療行為に従事する医師のことです。法務省は、将来のキャリアとして矯正医官を希望する医学生に対して、修学資金を貸与しています。月額15万という金額は他の奨学金と比較してもかなり高額です。初期臨床研修終了後、矯正医官として3年以上勤務することが返還免除の条件となっています。所定の勤務条件などはありますが、矯正医官には当直業務や残業などがないため、ワーク・ライフ・バランスを重視する人におすすめです。私も一時期、この奨学金を受給しようか迷っていた時期があります。公式サイト:https://www.moj.go.jp/KYOUSEI/SAIYO/scholarship/index.html1. 医学・薬学部生向けの奨学金重田教育財団 高校生-医学生奨学金この奨学金の特徴は、貸与対象が高校生であることと、学費だけでなく生活費も貸与してくれることです。「医学部にいきたいけれど、お金の問題で難しいから悩んでいる」という高校生は、ぜひ一度応募要項を確認してみてください。同財団は、海外留学生を対象とした奨学金も展開しています。公式サイト:https://s-ef.or.jp/medicalstudent/JEES・田辺三菱製薬医学・薬学奨学金この奨学金は、「次世代における医学・薬学界での人材育成への貢献と製薬企業として医療、福祉や科学技術の発展に寄与していくため」に、医学部・薬学部で学ぶ学生や留学生を支援するものです。月額15万円で、返済義務はありません。学年の指定がないことも大きな特徴といえるでしょう。公式サイト:http://www.jees.or.jp/sc-scholarship/jees_mtpc.htm2. その他、返済不要な奨学金ピジョン奨学財団小児科・産科・新生児科を志望する学生のための奨学金です。この奨学金の一番の魅力は「同じ志を持つ学生と交流を持てること」です。年に2回行われる交流会では、その道の先輩方と輪を囲んで話す機会が設けられています。小児科にもいろいろな領域が存在することや、それぞれ多様な課外活動にチャレンジされていることなどを知ることができて、同世代の仲間からよい刺激をもらいました。「進路の制限が定められておらず、最終的に周産期領域以外の診療科を選んでも返還する必要がない」ことも魅力のひとつです。医学部の奨学金は特定診療科や特定地域で勤務することを求めるものも多いですが、まだ20代の若者にとって、一生の進路選択のプレッシャーを抱えながら勉強するのは大変なことです。その点においてピジョン奨学財団は幅広い選択肢を見据えながら小児科・産科・新生児科への興味も高めることができるのでおすすめです公式サイト:https://www.pigeon-foundation.or.jp/川野小児医学奨学財団小児科を志望する、埼玉県あるいは千葉県の高校を卒業した医学生向けの奨学金です。こちらの奨学金も進路に厳格な制限が設けられていません。また、OB・OGとの座談会が企画されており、コミュニティに参加できることも、非常に大きい魅力です。小児領域の研究を志す学生に対するフォローアップもあり、その道のトップランナーを招聘した講演会にも参加することができます。公式サイト:https://kawanozaidan.or.jp/佐々木泰樹育英会医学生以外にも、建築学生や詩句に取り組む学生、デザインを選考する学生など、幅広い学生を支援している「佐々木泰樹育英会」。こちらの奨学金の特徴は「志望科による縛り」がないことです。課外活動に熱心に取り組む学生の応募を奨励しており、医学以外にも興味・関心分野がある学生におすすめです。公式サイト:https://sasakitaijuikueikai.or.jp/まとめ紹介させて頂いた奨学金は一例です。これらの奨学金のほかにも、さまざまな分野・居住地・勤務条件などを対象とした医学生対象の奨学金があります。医療系を志す皆さん。ぜひ、いろいろな奨学金を探して、応募してみてください。