公益財団法人山田進太郎D&I財団(以下、当財団)は、2026年3月9日(月)から12日(木)(米国中部時間、CT)に米国テキサス州・オースティンで開催された「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)EDU® 2026」にて、「How to Address Social Issues Like a Startup: Girls in STEM(スタートアップ的な思考で社会課題に挑む:Girls in STEM)」と題したパネルディスカッションを実施しました。■「SXSW EDU®」とは SXSW EDU® Conference & Festivalは、教育をテーマに世界の社会課題を議論する国際会議で、学習者・教育実践者・起業家などが一堂に会し、多様な視点や実践事例を共有します。米国の教育・テクノロジー・フィランソロピー領域において影響力がある年次カンファレンスの一つで、ゲイツ財団など主要な資金提供機関も多数参加しています。今年は、教育分野におけるAI活用やDEI政策への対応のあり方が主要テーマとなりました。■「SXSW EDU® 2026」開催概要開催日時:2026年3月9日(月)〜12日(木) ※米国中部時間(CT)開催場所:米国テキサス州オースティン市(オースティン・ダウンタウンエリア)規模:セッションやワークショップを300以上実施したほか、パフォーマンスや展示、メンタリング・ネットワーキングの機会などを含め、4日間にわたり多様なプログラムを展開対象領域:幼児教育、K-12教育、高等教育、社会人教育、教育に関する分野横断的な課題公式ウェブサイト:https://www.sxswedu.com ■パネルディスカッションの概要 本セッションでは、「社会課題を解決するために、スタートアップ的な思考でどのように取り組みを広げていくか」をテーマに、実践的な知見が共有されました。質疑応答を含む約45分の構成でした。■登壇者パネラー:アンジェリキ・リゴス氏(Angeliki Rigos)Epistimi, Inc PresidentMassachusetts Institute of Technology LEAPS Program 共同創設者リカ・ナカザワ氏(Rika Nakazawa)NTT Chief Commercial Innovation大洲 早生李(Saori Osu)公益財団法人 山田進太郎D&I財団 Head of Communicationsモデレーター:マイク・ゲルマン氏(Mike Gellman)キャリアコーチ、NPOメンターSolar Turbines 組織開発コンサルタントHigh Five Career Coaching 創設者■パネル「社会課題解決の取り組みをいかにスケールするか?共通原則とは」 セッションはマイク・ゲルマン氏の進行のもと、参加型のアイスブレイクからスタートしました。参加者の一人が「体重スティグマ(太っていることへの差別)」をテーマにピッチを行い、その後、「共感した人は?」「この取り組みに資金提供したい人は?」と順に問いかけ、手を挙げてもらいました。その結果、共感は広く得られた一方で、資金提供したい人は一部にとどまりました。ゲルマン氏は「共感とスケールは別」と指摘し、「社会課題への取り組みをどうスケールさせるか」がセッション全体の問いとして共有されました。 また、自身が展開する非営利団体と支援者をつなぐウォーキングイベント「Nonprofit Netwalks」について、非営利団体を主催者とする形に転換したことで、3年間で参加者900名超・50団体超に拡大した事例を紹介し、すでにブランド力や参加者基盤を持つ非営利団体と連携することで、より多くの人に参加してもらえるようになったと話しました。 続いて、当財団の大洲より、中高生女子向け STEM(理系)領域のツアー型体験プログラム「Girls Meet STEM」の取り組みについて紹介しました。日本の女子生徒の理数系学力はOECD諸国でトップクラスである一方、大学のSTEM分野の学部における女性比率は最低水準にとどまっている現状を示しました。代表理事が株式会社メルカリにおいて女性エンジニアの採用に課題を感じたことを契機に財団が設立された背景に触れながら、このような課題は一企業の取り組みでは解決が難しく、企業や教育機関、行政など複数のステークホルダーが関わる必要があると説明しました。 その上で、初期段階からスケールを前提に事業を考える中で、すでに大規模な展開が実現されている事例として、ドイツ政府主導の女子向け職業体験プログラム「Girls’ Day」を参考にした点に触れました。女子生徒約300名を対象としたオンラインプログラムでの検証では、STEM分野への関心が約3倍に高まり、「STEMは女性にも向いている」という認識が約9倍に向上するなどの変化が見られ、これを踏まえて2024年に事業を開始し、1年半で企業129社、大学32校が参画し、参加者8,500名超へと急拡大した実績を紹介しました。 この後のQ&Aセッションでは、大企業との関係構築の進め方について質問があり、当財団は、代表理事やチームが持つ産官学のネットワークを活用し、初期段階からスケールを見据えて大手企業から個別にアプローチしたことを説明しました。先行して知名度の高い企業に参加してもらうことで、その後の広がりにつながった点や、「いかに多くの中高生に届けられるか」という「数」を重視する、組織としての判断基準についても回答しました。 他のパネリストからも、取り組みをどのように広げていくかについて、実践的な知見が共有されました。アンジェリキ・リゴス氏は、インドにおける結核検査の課題に対し、現地の医療従事者と連携しながら、暑い環境でも使用可能な低価格の診断ツールを開発した事例を紹介しました。その上で、現場で無理なく使い続けられるよう低コストで運用できる形にすることが、取り組みを広げるうえで不可欠であったと振り返りました。 リカ・ナカザワ氏(ビデオ登壇)からは、NTT Dataブラジルによる「IT for Girls」が、マイクロソフト社やシスコ社、デル社などとのパートナーシップを通じて22か国・約13,000人規模へと拡大した事例が紹介されました。同氏は、取り組みは当初ブラジルで小規模で開始し、パートナー企業との協働や参加者のストーリーを通じて徐々に広がっていったと説明しました。また、参加しやすい共通の枠組み(プラットフォーム)や、参加者が担い手側に回るような仕組みなど、継続的に関われるコミュニティをつくることが重要であると話しました。 これらの議論を通じて、「Girls Meet STEM」の取り組みも含め、良いアイデアを社会的な変化につなげるためには、初期段階からスケールを前提として事業を設計すること、影響力のある企業や団体と連携しながら展開すること、さらに継続的に広がる仕組みを持つことが重要であると示されました。■SXSW EDU® 2026のセッション動向 SXSW EDU® 2026では、当財団の問題意識と重なるテーマとして「AIと教育」「企業と学校の連携」「DEI」が主要なテーマとして取り上げられました。 AI教育に関しては、教育現場におけるAI活用が主要テーマとなりました。教師向けのAI業務支援ツール「MagicSchool」(授業準備や教材作成を効率化するツール)のCEOが登壇したセッションでは、使いやすさを重視した設計によりテクノロジーに詳しくない一般的な教員層にも急速に普及した点や、導入校では学習成果が前年比28%向上した事例などが紹介されました。 また、「Classroom to Career: Teaming Up to Transform STEM Education」セッションでは、エクソンモービル財団やカーン・アカデミーなどが登壇し、STEM教育を学校からキャリアまで一貫して捉える視点が示されたほか、学力や科目選択といった中間指標を継続的に見ていく必要性や、企業が長期的にこのテーマに関わる重要性が強調されました。 そのほか、「Standing Strong: Safeguarding DEI in Higher Education」セッションでは、米国におけるDEIへの逆風を受け、MALDEF(法的支援団体)やExcelencia in Education(高等教育支援団体)が、理念ではなく進学率や修了率といった成果で示す重要性を強調しました。 当財団は今後も、「Girls Meet STEM」を通じて、事業とパートナーシップの拡大を引き続き推進するとともに、効果検証に基づく改善を重ねながら、より多くの中高生女子への機会提供を拡大していきます。また、今回の参加で得た気づきや接点を、今後の活動に生かしてまいります。■「Girls Meet STEM」への参画について「Girls Meet STEM」では、新たにご参画いただける企業・大学・高専を募集しています。ご関心をお持ちの方は、以下までお問い合わせください。参画に関するお問い合わせ(企業・大学・高専共通):https://share.hsforms.com/2mZnzIiyZQZWKpO8pp5Txlwr8gla■「Girls Meet STEM」について 「Girls Meet STEM」は、当財団が高専や大学、企業・研究機関と協力して実施する、中高生女子向けのSTEM(理系)領域のツアー型体験プログラムです。高専や大学のキャンパス・研究室や企業のオフィスを訪問し、実際のSTEM(理系)の現場を体験するとともに、大学生や大学院生、社会人女性との交流を通じて、進学やキャリアへの可能性を広げます。「Girls Meet STEM」プログラム公式ウェブサイト:https://gms.shinfdn.org/